ずっと気になっていたものがあります。
それは、いつのものか、誰のものかもわからない繭の存在です。
いつも作業をさせていただいている大石紬伝統工芸館や養蚕場の片隅に、2年ほど前からでしょうか、袋に入って忘れられている繭がありました。
なんとなく出どころが想像つく繭もあったのですが、長期間放置されていた繭は虫に食われて穴が空いてしまったりしていて座繰りには適さない為、譲り受けて真綿にすることにしました。

ひとまず、床に大きなビニールを敷いて、繭が入っていた袋を1つ1つひっくり返して中身を出しました。虫に食われていた繭は、虫の殻や謎の粉粉にまみれている為、丁寧に選繭しながら穴の空いてしまった繭と綺麗な繭を分けました。
本当に勿体無いことに、半分以上の繭に穴が空いてしまっていた為、洗濯ネットに入れてソーダで精練します。

煮上がった繭を広げて乾燥させていると、お散歩中の近所のおばちゃん方が懐かしそうに覗いて、声を掛けていってくれます。
私はたくさんの先人達に見守られて織り続けられているんだなぁと実感すると同時に、まだまだ未熟者ですが自分なりに努力していきたいな、と改めて初心に返る瞬間でもあります。

さて、精練した繭は、年末年始にぼちぼち広げて真綿にしていく予定です。
一方、選り分けた綺麗な繭は、座繰りをしてみて糸がひけそうなら糸にして、難しそうなら真綿にしていきます。

よくお婆ちゃん先生に「その年の繭はその年中に糸にすること」と言われています。
良い糸を作るためにもきちんと守らないといけませんね。
勿体無い勿体無い。

大きな洗濯ネットいっぱいの繭をソーダで煮ているところ
精練後の繭はひとまず乾かして真綿にするのを待ちます。